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11) あかねの空 快特高砂

○ 糀谷駅改札 (夜)
ヘルメットを腕に掛け、走って改札をぬける俊介。
浴衣姿の女の子数人と、すれ違う。振り返る、俊介。駅に向かう後ろ姿を見送り、空を仰いだ後、猛ダッシュで走り出す。

○ 嶋原家、全景 (夜)
細い通りに面した家々がひしめき合う。植木鉢や水を入れたペットボトルが置いてある。朝顔の蔓が上までからみついた門柱。子供用の自転車。しゃがんで道路に何か書いている男の子。遠くで聞こえる風鈴の音。
玄関の明かりが灯る。路地から駆け込んでくる、俊介。引き戸の玄関に消える。

○ 嶋原家、食堂 (夜)
俊介以外、嶋原俊也(52)、優子(41)、政也(15)、俊也の経営する工場の主任、浜本勇作(44)が食事をはじめている。
俊介が食堂に入ってくる。ヘルメットは持っていない。

俊介「ただいま」
優子「どこいってたの、俊ちゃん」
俊介「うん。友達のとこ。尚」
優子「手洗って、食事」
俊介「うん」
俊介、手を洗いに台所へ向かう。
俊也、少し酒がまわっている。
俊也「俊! 少しは仕事、手伝え!」
俊也、食事を終えて、テーブルから立ち上がり、仕事場に戻っていく。
手を洗って戻ってきた俊介、俊也の後ろ姿を見送る。食べることに専念していた勇作が箸を置いて、俊也の方に声をかける。
勇作「おやっさん、片づけ、おいといてくださいよ」
勇作一言だけいうと、残りの食事を一心に食べる。
俊介、勇作の隣、政也の前に座る。空の茶碗を優子に差し出す、俊介。
優子、茶碗を受け取るとなれた手つきで、ご飯を盛り俊介に返す。
俊介、お椀を優子に差し出す。同様にあさりのみそ汁をよそって返す優子。
俊介、みそ汁の中身を確認する。
俊介「おっ、あさりじゃん」
優子「ちゃんと帰ってこないと、おいしくなくなるよ」
俊介「うん」
勇作「なんかさ、俊は優子さんには素直だよな」
政也がにやっとする。
政也「兄貴は、マザコンだから…」
俊介、テーブル越しに政也に手を出す。後ろにのけぞって逃げる政也。
優子「これ、政也! 俊介もちゃんと食べなさい」
俊介、政也、表向きは静かにする。
優子、自分のご飯を食べ終わり、俊也と自分の食器を片づける。
優子「浜本さんも、余計なこと言わないでよ」
勇作、恐縮しながらもおどけている。
勇作「すんません」
優子、台所に姿を消す。俊介、その隙を見逃さず、中腰で政也の頭をはたいて、何食わぬ顔で食事を続ける。優子が戻ってくる。政也、ややふくれっ面。
政也「ごちそうさま」
政也、自分食器を台所に運び、そのまま自分の部屋へと消える。
勇作「兄の勝ち」
優子、ちらっと勇作を見る。勇作、あわてて口に手を当てると立ち上がり、食器を片づけようとする。
優子「いつもしないことやらないの。浜本さん」
勇作「です…ね。ごちそうさんでした」
優子「はい。おとうさんに、もう少ししたらお茶もっていくからって」
勇作「あいよっ!」
勇作、仕事場へと向かう。
優子、黙々と食べる俊介をみていたが、テーブル脇のワゴンから急須とお茶の缶を取り、お茶を入れ始める。
優子「俊ちゃん、たまには手伝いなさいよ、ね。長男なんだし、出来るんだから」
俊介「うん」
俊介、優子の話は上の空。

○ (俊介の回想)上の畑の道
遠くまで続いている畑道と、その先に輝く海。
あかね(声)「空の色でしょ?」

○ 俊介の手元
箸が手から滑り落ちる。はっと我に返る俊介。優子が笑っている。
あわてて箸を拾う俊介。
優子「なに、いいことでもあったの?ガールフレンド?」
俊介、一瞬ご飯を喉に詰まらせるが飲み込む。
俊介「んなんじゃないって、ちょっと考え事」
優子「私はかまわないわよ、どんな子でも。俊ちゃんがいいっていうなら」
俊介「ちがうっつってるじゃん。なんだかな、尚といい・・・」
優子「そぉーお」
優子、うふふと笑い、入れたお茶を丸盆に乗せて、仕事場へと去る。
俊介、一人になると箸を置き、椅子の背にもたれて、息を大きく吐く。吐ききったところで、口元がにやける。

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