- 2007-12-07 (金) 14:00
- 2-あかねの空
○和田長浜海岸
快晴の初夏の海。
俊介オートバイを道路の切れた端に止め、ヘルメットを脱ぎ、砂浜へと降りていく。真夏の空。荒崎側の岩場寄りに、夫婦に見える二人連れの老人。
枝のような木ぎれで、波打ち際から水面をさぐっている老夫婦。俊介、その光景を眺めている。
○海面
きれいなスカーフが、水面に半分浮いて漂っている。木ぎれがスカーフの表面をさらう。木ぎれでスカーフを拾おうとしている、老夫婦。
○波打ち際
老夫婦が木ぎれでスカーフを拾おうとしているところに、俊介が近づく。俊介、くつと靴下は脱いである。老夫婦の前を通り過ぎ、海の中に入って膝にかかるくらいまで水につかり、スカーフを取り上げ、波打ち際まで戻ってくる俊介、スカーフを婦人に差し出す。
俊介「はい」
老婦人「ありがとうございます」
数度、お辞儀を繰り返し、お礼を言う老婦人。
老人「かたじけない。見も知らぬ私たちの為に、ご足労おかけしました」
俊介「いえ、そんな、たいしたことじゃないんで」
俊介、脱いだくつのところまで戻ろうとする。俊介の腹が鳴る。老婦人が微笑む。
老婦人「あら」
俊介、つぶやく。
俊介 「…なんにも食ってねーや」
老婦人、戻ろうとする俊介を呼び止める。
老婦人「おまちなさい」
老婦人、砂浜に置いてあった手提げから包みを取り出す。
老婦人「年寄りの作ったものだから、お口に合うかわかりませんけれど」
老婦人、話しながら包みをほどき、竹の皮にのせたおにぎりを取り出す。
俊介「あ、いや・・悪いですから」
老人「遠慮はいりませんよ。今必要なモノは、ためらわずに受ける。そういう時もあるものです」
老人、おにぎりを一つ取り、ほおばる。
老人「うん。うまい」
俊介、老人につられて、おにぎりを取り、一口かじる。
俊介「すんげ、うめ!」
俊介、瞬く間に食べ終わる。笑顔で俊介を見ている老婦人。
老婦人「もうひとつ、おたべなさいな」
俊介、竹の包みごと老婦人から受け取り、砂浜に座って食べ始める。
老夫婦、再び波打ち際まで歩いていき、水平線を眺めて、おだやかに話をしている。二人の向こうに富士山が朝日を浴びて輝いている。
俊介、老夫婦を見つめたまま、目が離せなくなっている。
老婦人が、振り返る。
俊介「あの…」
俊介、食べ終わった包みを丸めて、ポケットにつっこむと、立ち上がり老夫婦に近寄っていく。
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