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30) あかねの空 快特高砂

○病室のベッド
俊介、目を覚ます。白い天井を見上げている。
俊介「夢…。だよな」
病室のドアをノックする音。
俊介「どうぞ」
ドアが開き、尚が顔を出す。
尚「よう」
俊介「おう」
尚「どうよ」
俊介「まあな」
尚「陽子、花、持ってきた」
俊介「うん」
尚「パソコン、持ってきた」
俊介「サンキュ」
尚、パソコンをベッドテーブルに載せ、電源をつないでおく。
尚「手は?」
俊介「なんとか」
尚「あの人、来たか?由香さん」
俊介、言いよどむ。
尚「まだ…。一度もか?!」

○俊介の病室前廊下
ドア前、花瓶に生けた花を持って立つ、陽子。中の声が聞こえてくる。
俊介「一度、事故のすぐ後に来た…らしい」
尚「来たのか」
俊介「ああ。オレのこと聞いてたけど、気が付いたらいなくなってたって」
尚「それで?」
俊介「それだけ。いないんだってさ、どこにも」
尚「そんなはずあるかよ」
俊介「あるんだよ」
尚「だって! 子供…」
尚、慌てて口をつぐむ。
俊介「うっせーな、知るかよ」
陽子がドアを勢いよく開けて、入ってくる。
陽子「おまたせー」
俊介「おう」
陽子「どう?もう車いすで、ウィリーできるようになった?」
俊介「もうちょいだな」
尚「やめとけよ、コケて首折ったらシャレになんねーぞ」
陽子「もう、尚は…」
俊介「こーゆーヤツだからさ、大変だろ」
陽子「だよねぇ…、最近わかった」
尚「今頃、わかった?」
俊介「まあさ、泣くことあったら、オレんとこ、こいよ」
陽子「んー、五年前に聞きたかったなぁ、その台詞」
尚「陽子、帰るぞ」
俊介「おー、妬くんだ、尚でも」
尚「んなわけねーだろ! 用があんだよ」
陽子「あれ、そうだっけ?」
尚「おら、いくぞ!」
陽子、俊介に首をすくめてみせる。笑いながら、手で尚と陽子を追い払う俊介。
陽子「じゃ、またね!」
俊介「おう!」
陽子を先に出す、尚。振り返る。
尚「……またな!」
俊介、軽くうなづく。尚が病室を出て、ドアがしまる。
静寂。
俊介、思い切り息を吐き出し、天井を向いて脱力する。
俊介「…つかれた」
俊介の閉じたまぶたから、涙が一粒こぼれる。

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