- 2007-12-13 (木) 7:30
- 2-あかねの空
俊介、写真をクリックする。拡大された写真と、文章がPCに表示される。
横から尚が乗り出して、記事を読み上げる。
尚「三浦半島に行って来ました。春が一足早く来ているようなあたたかな日で…」
尚、この文章がなんなのという顔で、俊介を見る。俊介、読み進んでいて尚に気付かない。
尚「おみやげ物はいくつか買ったのですが、帰りがけに、路地売りの野菜をいくつか買いました。その時の買い物袋に張ってあったステッカーです。娘がとても気に入ったので、綺麗にはがしておもちゃ箱に張り直しました。このときに買った大根で煮物を作ったら、野菜嫌いの娘が輪切りの大根をまるまる一個食べてしまいました」
読み終わった尚、俊介を見る。俊介、すでにPCから目を離し、天井を見上げている。首をひねりながら、再びPCを見る尚。
尚「……ああっ!」
俊介、尚の声におどろいて、尚を見る。部屋の扉が開いて、優子がコーヒーとお菓子をのせたお盆を持って入ってくる。
優子「なんだか、にぎやかねぇ」
尚、優子を振り返ると、恐縮して、ぺこぺこお辞儀をする。
尚「すみません、つい」
優子「いいのよ、少しにぎやかな方が」
優子、ニコニコしながら部屋を出て行く。尚、再びPCを見る。
尚「これ、お前だろ!」
俊介「尚、声でかいよ」
尚「だってよー、これ、ぜったいお前だよな?」
俊介、PCを見る。あかねの書いたイラストのステッカーが画面に表示されている。
○(回想)8年前の桑沢家の上の畑
畑脇の私道。
まだ18の俊介とあかねが、夏野菜をかじっている。麦わら帽子のあかね。
空色のヘルメットを被った俊介がオートバイで走り去る。あかねが手を振る。
あかね「じゃあ、またねぇ!」
○俊介の部屋
○PCデスク前
俊介、ぼんやりと画面を見つめている。
尚「おい!きいてんのか!」
俊介、はっとする。
尚「一人で遠い目してんなよな。で、これはどういうことよ?」
俊介「わかんねーや…」
尚「ああっ!わかった!」
俊介「おめ、でかいよ、声…」
尚「あ、わりい。けどさ、菜の花って、大根じゃねーの?」
俊介「え?」
尚、再びPCの画面をしげしげと眺める。
尚「ふーん、そうかぁ…なるほどねぇ」
尚、ステッカーの中の麦わら帽子の女の子を指さし、にやっと笑う。
尚「これだな。みつけたぜ」
俊介、尚の頭をはたく。
俊介「汚い指で、画面を触るなって」
尚「この女かぁ…、お前のマドンナ」
俊介「…わかんねえよ」
俊介、考え込んでいる。
○(空想)大根の花畑
白い菜の花のような花をつけた大根が一面に咲いている。
麦わら帽子の若い女が振り返る。笑顔のあかね。
俊介、思わず笑顔になる。
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