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36) あかねの空 快特高砂

○俊介の部屋
尚「おい、一人でにやけるな。全部話せよ、探すの協力するから」
真面目な口調になった尚の声に、我に返る俊介。
俊介「あ、ああ。…オレがオートバイ初めて買った時、三浦半島行っただろ。あんとき、会ったんだその子」
尚、二、三歩下がって、椅子に腰掛ける。
俊介「適当に走っていて、眺めがすごくいいところで、オートバイを止めて、地図を確認しようとしてたら、その子が横に居たんだ」
尚「一目惚れか」
俊介「かもな。そんな風に意識しなかったけど、畑から見える景色全部説明してくれて、畑でとれた野菜、一緒に食べて。で、古いメットあげて」
尚「それで?」
俊介「それだけ」
尚「は? なんだよ、それ。何にもなく、帰ってきたっての?」
俊介「悪いかよ」
尚「わりぃだろ、そりゃ!! 俊介さ、隠すなよな。お前がそれだけで帰ってくるわけないだろ?正直に言えよ、正直に」
俊介「帰ってきたんだよ。マジに」
尚「うわっ、しんじらんねー」
俊介「しんじられねーついでだけど、名前も、電話番号も聞かなかった…」
尚、ぽかんと口をあけたまま、静止している。
俊介「その後、三浦行って覚えてる限りのところ走ってみるけど、一度も会えたことないんだ」
尚「うわっ、なんだよ、純愛モノっての? やめなさいって、冗談は……」
尚、俊介を見る。俊介が泣いている。尚、当惑する。

○俊介の部屋の窓
窓から羽田の飛行場で離発着する飛行機が見える。夕暮れ近く、オレンジに染まっている空。

○俊介の部屋
床の上にあぐらをかいて座っている尚。上目遣いに俊介を見る。
尚「とりあえず、泣くな」
俊介、バツが悪く、言い返す。
俊介「うるせー! お前だって、陽子のことになると、泣きそうだったくせによ」
尚「おぼえてねーもん、そんなこと」
俊介、ケッとつぶやき、尚に背をむけ、PCに向かう。
俊介「どこだかわかんないもんな、これだけじゃ」
尚「とりあえず、三浦で野菜路地売りしてる農家、あたるべ」
俊介「…でもな。」
俊介、ぽつんと言うと、黙ってしまう。尚、あぐらを崩して立ち上がりかける。
俊介「見つけて、それで、どうってわけじゃないよな…」
尚「なんだよ、その程度かよ。ステッカーの先にその子が居たとしたら、絶対脈ありだぜ、男いなかったらだけど」
俊介、はき出すように言う。
俊介「居るだろ、男。結婚してるよ」
尚、俊介の肩を小突いて言う。
尚「それでもいいじゃんよ、きっと覚えてるだろうし。見つけようぜ」
俊介「そう、だな」
尚「んじゃ、このURLさ、メールしとこうぜ。SkyRootsに」
俊介「ああ」
俊介と尚、メーラーを開いて、メールを打ち込む。
俊介(声)「会いたかった。でも会ってどうすることもできないってわかってた。たとえその子がフリーでも、オレには、手が届かない」

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