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54) あかねの空 快特高砂

○窓際のミーティングテーブル
暗い表情の俊介。あかねが駆け寄ってくるが、二、三歩手前で立ち止まる。
あかね、とまどいが顔に表れるが、明るい声を出して俊介に呼びかける。
あかね「俊介さん、おまたせ」
俊介、ハッとする。車いすを反転させて、あかねの方を向く俊介。
俊介「悪いね、昔の知り合い」
あかね、ふふふと笑う。
あかね「ガールフレンド? 素敵な人ですね」
俊介「ああ。そうだよな、ホント」
俊介、一瞬顔が曇る。あかね、その一瞬をみのがさない。
あかね「今日は、もう終わりにしましょうか」
俊介「え? まだ一社、話を聞いてもらうことになってたでしょ?」
あかね「さっき家に連絡したら、先方から電話が来てて、用事ができたからって」
俊介「そんな、アポちゃんととったから今日来たのに」
あかね「ごめんなさい。私、いいですよって電話して、言っちゃいました」
俊介「え? そうなの?」
あかね「俊介さんには、ムリ言ってたくさん手伝ってもらってるし、今日はもう終わりにして、おいしいご飯でも食べましょ? 兄ちゃんから資金もらってきてるから」
俊介「あ、でも」
あかね「せっかく、ここまで出てきたんですもん。品川。めったにこれないし」
俊介「…お、おおげさじゃない?」
あかね「あ、そうか。俊介さんはこっちの人だもんね」
俊介、苦笑い。
俊介「わかった。ご飯行こうか。何食べたい?」
あかね「えーっと。ステーキとか」
俊介「ステーキ? ま、いいや」
あかね「なんか、変ですか?」
俊介「いや…、知ってる店なんだけど、葉山牛なんだよね」
あかね「え? 三浦の…?」
俊介「そう。家帰ったら、いくらでも食べられるんじゃないの?」
あかね「うち、めったにステーキなんてしないもん」
俊介「レストラン、あるじゃない」
あかね「めったに外食しないから」
俊介「あ、そうなの?」
あかね「そうなんです」
俊介「じゃ、いっか」
あかね「行きましょ、葉山牛食べに!」
あかね、テーブルの上にあった荷物を手早くまとめ、自分のワンショルダー・バッグにしまい、俊介の背後にまわる。
俊介「建物出るところまでは、自分でいくから」
あかね「はい」
俊介とあかね、並んでミーティングフロアーの出口へ向かう。

○ビル一階
ガラス張りの吹き抜け、木々が植えてあり、噴水が流れている。
俊介の速度に合わせて、ゆっくりと歩くあかね。
あかね「なんだかさー、不思議なのよね。ビルの中に木が植えてあって、小川みたいになってるでしょ」
俊介「うん…」
あかね「木って、やっぱり外の地面に生えてないと、変だよね?」
俊介、笑う。
あかね「おかしいかなぁ…」

○レストラン
空間をゆったりと取ったレストラン。インテリアもシンプルにやや冷たい色調でまとめてある。真四角に近いテーブルに向き合って座る俊介とあかね。
ウェイターが、料理をそれぞれの前に置いて、立ち去る。ステーキと付け合わせの皿、ライスの小皿。いただきますと言って、ステーキを一口分切り、食べようとするあかね。困った表情の俊介。俊介に気づき、食べかけた一口をそのまま、皿に戻すあかね。
俊介(声)「あかねって、オレはよくわかんない。由香に会って、実際、そのままいなくなっちゃいたいくらい落ち込んでた。でも、あかねが笑顔で現れたら、とりあえず食事は出来そうな気がしてきて、」
あかね、俊介の皿とカラトリーを引き寄せ、一口サイズに切り分けると、笑顔で皿を俊介の前に返す。自分のカバンから、自助具を取り出す、俊介。あかね、ああ、そうかと頷く。
俊介(声)「そのうちに、なんだかいいことだってあるさってそんな風にも思えてくる。できることなら、あかねとずっと一緒にいたい…。自分のしてきたこと、今の状態、どれからしてもムリだって分かる。でも、自分の気持を誤魔化すことはできなくなっていた」
俊介、ぎこちなく笑顔をつくる。元気に再度いただきますと言って食べ始めるあかね。俊介、あかねを見ているが、その食べっぷりに思わず微笑む。

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