- 2007-12-24 (月) 0:30
- 2-あかねの空
○
俊介、皮肉な口調になっている。
俊介「オレね、何しに来たか知ってる?死のうと思ったんだよね」
あかね、半ば怒ったような、泣きそうな顔をしている。
俊介「けど、結局、死ねないんだな。そうなんだ。不自由ってさ、死ぬのも自由にならないんだぜ。崖から飛び降りるんでも、崖までいかなきゃならないし、手首切るのだって、刃物を持てなきゃできない。舌かみ切るのは、成功率低いしな」
あかね「ばかみたい…」
俊介「え?」
あかね「わざわざ死のうとするなんて、ばかみたい。生まれたらかならず死ぬのに。せっかく生まれたんだから、生きなきゃ、おかしいよ。うちの畑の野菜も、いつも一緒に畑までついてくる烏も、自分から死のうなんてしないよ」
俊介「…わかるわけないよな。やりたいことあったのに、やりたいことあるのに、出来ないって。やれることしか出来なくて、こうしたいってことの十分の一もできなくて、誰もが出来てることが出来なくて、生きてる気がするわけないだろ!やる気なんてだせねぇんだよ!こんなヤツなんだよ、オレは。もう、ほっといてくれよ!」
俊介、あかねに背をむける。
あかね「…そんなだったんだ。私、楽しかったのに。俊にサイトの作り方教わって、一緒にいろいろ考えて、何度も間違えて怒られて。でも、一生懸命教えてくれる俊は、辛かっただけなの?昔に畑で会った時と同じ笑顔だとばっかり思ってた。強いんだなって思ってた」
俊介、動かない。あかね、無言で俊介を見ている。
あかね「私、やっぱりみかんの木なんだね。日溜まりで育って、世の中のことなんにも知らないで。…私がばかなんだね。勝手に心は通じるって思い込んでた。つくりはじめたサイトに関わりに来た人、みんなそうなんだって思ってた。一番近くにいるって思ってた俊が、違ってたなんて」
あかね、強く息を吐くと、ワンショルダーのバックをつかんで、ドアに向かう。大股でずんずんと歩いていき、ドアのノブをつかむ。
○部屋内側・ドア
あかねの手がドアノブを回転させる。カチッとノブが音を立てる。
俊介 「一緒に!いてよ…」
あかねの手がノブを放す。
○ドア前のあかね
あかねの目が少し開かれる。
沈黙が流れる。あかねが振り返りそうになる。
俊介 「オレ、こんなだし、さ。オートバイももう乗れないし。どこかつれて行ってあげることだって、簡単にできないし。 仕事も決まってあるわけじゃないし…」
俊介、いいよどむ。
あかね、やや下を向いたまま、佇んでいる。
俊介 「オレ、手間かかっちゃうし。 それに…エッチするんだって、他の奴らみたいにうまくできやしない」
○俊介の車いす
一心にしゃべる俊介。
俊介 「なんだか、どうしてか、わかんないけど、一緒に居たいんだ。迷惑だし、ムリなことだけど。 でももう…あかね以外、考えられなくて。」
急に言葉を切って、うつむく俊介。
○うつむいた俊介の背中
俊介 「なんで…。十年前、あのとき名前きいて、電話番号きいて。そしたら、なにもかも違ってたかもしれない。事故もなくて…。こんなみっともないことやってなくて…。どうしたらいいんだろ…」
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