** 5
いつも履いているブーツに足を入れ、少し考えてから脱ぐ。
AVIAのスニーカーに履き替えて靴紐をしっかり締め直す。
ヘルメットのシールドを下げ、クラッチをつなぎオートバイをスタートさせる。
武田薬品前を普段の半分以下のスピードで走り、弥勒寺から裏道、裏道へと走る。
♪
うん、楽しい。
真夏の時よりほんの少し弱くなった陽射しを浴びて走る。
南藤沢で片瀬県道に出てまた路地に入り柳小路の駅へ。
「待った?」
「青いオートバイではなかったの?」
「友達と交換しているんだ。一週間だけね」
「バイクとかオートバイと言うより単車という感じで素敵ね」
「僕に似合うかな?」
「どうかしら。走ってみないとわからないわ」
「行こう。乗って」
** 6
慎重にオートバイを操作して、海沿いの国道へと南下する。
国道に出たら右折して鵠沼の海水浴場へ目指す。
信号で止まったときにトシコ先輩が言った。
「似合ってるわ」
「高い身長にとっても似合ってる」
「背中から見ているととっても素敵」
僕は笑顔で応える。
真夏の間は大混雑だった海沿いの国道も、夏の終わりを迎え、平日にはずいぶんと空くようになった。鵠沼海岸までは数分で着いた。
「水着は?」
「着ちゃってるから、上を脱いだらすぐに泳げるわ」
「僕も同じ。すぐに海に飛び込める」
晩夏の陽射しを身体全身に受けて、海で泳ぎ、トシコ先輩と水で遊ぶ。
湘南の生まれ育ちのトシコ先輩は、僕と変わらないほどに泳げる。
急に海面からいなくなったかと思うと、水の中から僕の足を引っ張る。
水面から顔を出すと大笑いしている。
僕も水の中にもぐってトシコ先輩を水中に引っ張り込む。
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