ヨコハマ・ベイ・パーク・ストーリー 第2話-1

※新規ウインドウで開きます 印刷

-帽子の男:第2話_scene 01-03 - author:松戸

○東京港北病院・外観

春の暖かい日差しに照らされている、東京港北病院の白い建物。

○同・廊下

病院の廊下を歩く、ライダーブーツのアップ。病室の前で止まる。
ドアを軽くノックするのは---アキオ。
そっとドアを開け、病室に入る。

○同・病室

個室ベッドには・・・・誰もいない。
ベッドサイドのテーブルの下、ゴミ箱の中にガラスが割れた写真立てが見えた。
アキオ、その写真立てを手に取り、写真見て--

アキオ「・・・・」

○山下公園・海岸側

昼下がりの山下公園を散歩している感じの、チャゲ、M姐、カーナシの3人。

カーナシ「鮎川って、金融業者っていうよりも、ヤクザなんだろ?」
チャゲ「・・・・」
M姐「ん・・・ヤクザっていうか、企業舎弟?よく知らないけど」
カーナシ「そんな鮎川と、なんでアキオが知り合いなんだ?」
M姐「それがさ・・・」

○東京港北病院・正面玄関

病院の外に駈けだして出てきたアキオ。左右を見て、誰かを捜している感じ。
ちょうど、病院を出て行こうとするタクシーの後部座席に、女性の姿。
アキオ、タクシーに向かって駆け出すが、そのままタクシーは走り去ってしまう。

アキオの背後に、ロン毛の黒いスーツの男が現れる。
黒スーツ男「よぉ!」

振り向いたアキオ、男を見て少し動揺する。
黒スーツ男「あれ~。何回か連絡したんだけどなー。シカトじゃないよなぁ?」
脅迫っぽい男の笑い顔。

黒スーツ男「連帯保証人・・・だよね?」
アキオ「・・・」

 

○03東京港北病院・正面玄関:前回のシーン続き

黒スーツ男「連帯保証人・・・だよね?」
アキオ「・・・」 

連続的な電子音-入ってきて-

○04中華街路地

カメラがパンすると、そこは中華街の路地。
連続的な電子音は、チャゲの電動車椅子の音。

歩道に放置してある自転車がチャゲの行く手を塞いでいる。
少し顔をしかめて、自転車をよけて進むチャゲ。
ふと、視線に気づいて路地の先を見ると、黒い猫が一匹、チャゲの方をじっと見ている。 

チャゲ「何だ。見てたのかお前」

しかめっ面を見られたようで少しバツが悪い。猫はじっとチャゲの方を見ている。
チャゲも猫の方を見ながら、電動車椅子を進める。
黒猫に気を取られたチャゲは歩道の段差に不用意に乗ってしまい、バランスを崩してしまった。 

チャゲ「チッ」

バランスを崩したチャゲの頭からパナマ帽が地面に落ちた。
落ちた先は運悪く、水溜り・・・ 

チャゲ「あーあ・・・」

チャゲ、お前のせいだぞと、黒猫がいた方を見ると、すでに黒猫の姿はなかった。
視線をパナマ帽の方に戻すと、今度はパナマ帽が消えていた。 

チャゲ「はぁ?」

そこへ脇から、チャゲの目の前に差し出される、女性の白い手とパナマ帽。

ユキ「はい、これ。少し汚れちゃいましたね・・・」

黒いブラウスを着た清楚な感じのユキ(20歳)。

チャゲ「ああ、ありがとう」

ユキ、パナマ帽を見て-

ユキ「すぐにシミ抜きすれば、大丈夫かも。私のお店すぐそこなんです」

チャゲ「いや、いいよ・・・」

ユキ「車椅子が段差に乗ったとき、声を掛けようとして掛けられなかったんです。声を掛けていれば帽子が落ちることはなかったかも・・・。それに、私のお店って元は帽子屋さんなんですよ!」

さぁ!と、ユキに促されるままに、チャゲ小さな雑貨屋に入ってゆく。

scene 04:END

 

○05中華街・雑貨屋

こじんまりとしているが、可愛らしさのある店内。
店内を見回している、チャゲ。
中華街のことなら詳しいはずのチャゲもこんな店がここにあるとは知らなかった。
雑貨の脇に帽子が数点置かれている。

ユキ「ちょっと待っててください、すぐにやってみます」

ユキはカウンターの奥に入り、手際よくシミ抜き作業をはじめる。

チャゲ「こんな店があったなんて・・・ごめん、知らなかった」

ユキ笑って-

ユキ「あまり目立たないから。おじいさんの代には帽子屋だったんですけど、それだけではキツくなって雑貨屋をはじめたんです・・・はい、これで大丈夫だと思います」

ユキからパナマ帽を受け取ると、泥の黒いシミはすっかり落ちていた。

チャゲ「ありがとう。ところで、さっき店の前にいた黒猫だけど・・・」

ユキ「黒猫?ですか?」

チャゲ「いや、その猫を見てたら段差に乗ってしまって。だから、キミのせいじゃないよ」

ユキ、優しい表情になって-

ユキ「ありがとう。でも通りにはあんなに大勢人がいるのに・・・」

店の外の通りを行き交う人々・・・

ユキ「みんな見てみぬふり・・・」

チャゲ「キミは見てみぬふりはしなかったじゃない」
チャゲ、パナマ帽をかぶり、ユキを見る。

ユキ「いいえ、わたしも見て見ぬふりをしている一人なんです・・・」

ワケありっぽい、悲しそうなユキの表情---

○06東京港北病院・駐輪場

黒スーツ男「平和的解決!それがイチバンだろ?」
ニッコリ笑った表情ががらりと変わる。

黒スーツ男「月末までだ。それ以上は待てね。わかったな」

アキオ「ああ・・・」
アキオ行こうとするが、黒スーツ男に肩を掴まれる。

黒スーツ男「おいおい、話は終わってねーだろ。とりあえず、今持ってるだけ払ってもらおうか。俺もサ、ガキの使いじゃねーからここまで出張って手ぶらじゃ済まねーんだよ」

アキオ「カネは・・・(ない)」
うつむく、アキオ。

黒スーツ男「しゃーねーなぁー。じゃ、ドカだな」
駐輪場に駐車している、アキオの黄色いドカティ900GTS。

黒スーツ男「ほら、キー出せ。ホラホラっ!」

黒スーツ男が差し出した手を払ったとたんに、アキオの頬をパンチがかすめた。
アキオにパンチをよけられて若干焦った感のある、黒スーツ男。

黒スーツ男「てめ、ナメンなよ!」
今度はよけられないように、アキオに近づく黒スーツ男。だが、先にアキオの左足蹴りが黒スーツ男のみずおちに入った!

黒スーツ男「うぐっ!」
その場にうずくまる、黒スーツ男。

アキオ「バイクは渡せね・・・カネは月末までにはなんとかする」
アキオ、そのままドカに向かう。

黒スーツ男「てめ、ただで済むと思うなよ・・・」
アキオの背中に捨てゼリフを吐く黒スーツ男。胸ポケットから、デコレーションされた携帯電話を取り出しながら、ニヤニヤと笑っている・・・

アキオ、ドカのエンジン始動して-
ツイン・エンジンの音が響く---

scene 05-06:END

※このシナリオはフィクションであり、実在の人物、団体などとは一切関係ありません。