ヨコハマ・ベイ・パーク・ストーリー 第2話-3
2010年 1月 09日(土曜日) 22:52
○18首都高速湾岸線
街灯に照らされた高速道路に光る一条のライト。
アキオのドカティのリアシートにサキ。
アキオ「ひゃひゃひゃひゃー!」
サキ「ワオォー!!!」
夜の高速を加速してゆくドカティ。
サキ「最高ぉー!」
握った右手を前に突き出すサキ。
アキオ「おおおぃ!手を離すなよ!」
羽田空港の明かりの中を突っ切ってゆく。
○19岬の駐車場
街灯の薄明かりに照らされた岬の駐車場。ガードレールの下には海が広がっている。
その真っ暗な海の先に浮かぶ対岸の明かりを、並んで見つめるアキオとサキ。
アキオ「下に降りなくていいのか?」
サキ「うん。ここでいい・・・」
サキ「目が慣れてくると、薄っすらと海岸線が見えるね」
アキオ「そうだな。波の音もかすかに聞こえる・・・」
サキ「・・・ほんとだ」
笑顔でアキオを見るサキ。アキオと見詰め合いながら、表情が翳る。
ガバッとアキオに抱きつくサキ。
サキ「ありがとう・・・わたし、怖くて・・・明日の検査で、もしも再発してたら・・・」
アキオ「大丈夫だよ。そんなの再発なんてしてないって」
サキ「わたし、死んでも・・・アキオとここに来たこと忘れないよ」
アキオ「なに言ってんだよ!そんなこと言うな」
サキ「アキオも忘れないって約束して」
アキオ「・・・約束する。忘れない。でも、大丈夫だ・・・」
サキ「うん・・・」
寄り添う二人の影。
-アキオ・モノローグ-
アキオ「翌日の検診の後、転移が見つかりました」
scene 18-19:END
○20元町・ル・シュマン
ポットがコトコトと、沸騰して音をたてている。
カーナシ「・・・マジかよ」
なぜかカーナシは聞いていられない様子。立ち上がってタバコに火をつける。
きつく吸い込んだタバコの火が、赤々と燃える・・・。
○21東京港北病院
タバコの火が、急患を知らせる赤いランプにオーバーラップ。
○22東京港北病院・病室
サキ「うそ・・・どういうこと・・・」
どう声をかけてよいのか戸惑うアキオ。
-アキオ・モノローグ-
サキの落ち込みようは酷くて、俺はなんて声を掛けていいのか分からなかった。
それでもサキは、放射線治療に望みをかけました。
○23東京港北病院・放射線治療室前
車椅子に座っているサキ。
サキ「アキオ・・・私、がんばるね!」
アキオ「ああ!がんばれ!負けるなサキ!」
せいいっぱいの笑顔を見せる、サキ。看護師に車椅子を押され、治療室に入ってゆく。
アキオの目の前で閉じられる白い扉。
-アキオ・モノローグ-
放射線治療の最初の第一クールで、サキは酷い吐き気に襲われました。食欲がまったく無くなり、日ごとに痩せてゆくのが辛かった。
それでもサキは・・・「がんばる」って繰り返していました。
scene 20-23:END
○24元町・ル・シュマン
マスターが静かにウエッジウッドのカップを棚に戻している。
アキオ「サキは・・・自慢だった髪が少しずつ抜け落ちてしまったことがショックだったのに、俺には治ればまた新しく生えてくるし、この際全部リニューアルするんだって前向きに話していました。でも・・・」
黙って聞いている、チャゲの細い眉が少し動く。
アキオ「腫瘍マーカーの値に一喜一憂しながら、次第にサキは元気がなくなって・・・」
○25東京港北病院・病室
病室のベッドに半身を起こしてうつむいてるサキ。
その横にアキオがパイプ椅子に座ってうつむいている。
サキ「たまにね希望がなくなっちゃうことがあるの・・・」
顔を上げるアキオ。何か言おうとして・・・
サキ「こんなに辛いって誰も教えてくれなかった・・・」
-アキオ・モノローグ-
次第に彼女の心が・・・なんていうか・・・悲しみに覆われていくのがわかった。俺はそんなんじゃダメって励ましたんだけど・・・サキは目に見えてイライラとするようになってしまった・・・
アキオ「そんなこと言ってたらダメだ。もうちょっとの辛抱だから・・・」
サキ「もうちょっとっていつなの?アキオにそれが分かるの?いつまで辛抱すればいいのよ!」
アキオ「今の治療が終わるまで・・・」
サキ「この手を見て・・・お婆さんみたいじゃない!」
ベッドにうつ伏せて泣き出すサキ。
アキオ「サキ・・・そんなのも治ればすぐに元に戻るよ。だから・・・」
サキ「だから?・・・アキオならわかってくれると思ったのに。もう帰って・・・」
-アキオ・モノローグ-
それから数日後、サキは病院を抜け出して姿を消してしまった。
○26元町・ル・シュマン
目を閉じて黙って聞いていたチャゲが、目を開けた。
ため息をつく。
チャゲ「まーったく」
一同、顔を上げてチャゲを見た。
scene 24-26:END
※このシナリオはフィクションであり、実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
