ヨコハマ・ベイ・パーク・ストーリー 第2話-4
2010年 1月 09日(土曜日) 22:52
○27元町・ル・シュマン
チャゲ「アキオのさー、気持ちもわかるんだけど、サキちゃんはどんどん追い込まれちゃったんじゃねえ?辛いっていう現実に共感して欲しかったんじゃない?」
アキオ、少しはっとしたようにチャゲを見つめる。
チャゲ「がんばれって言うのって、変な言い方だけど誰でも言うだろ?ある意味、無責任な言葉かもな。がんばれ!はい、この話題終了・・・みたいな」
アキオ「そんなつもりじゃ・・・(ない)」
チャゲ「正直アキオにとっても、治療がうまくいかずにイライラしている彼女が負担になってなかったか?」
チャゲ「『がんばらなくていい』そう言う方がずっと責任が重い。治って欲しいって思うことと矛盾するように思うかもしれないけど、それは違う」
アキオ「・・・」
チャゲ「死んでしまうことよりも・・・辛いことがある」
チャゲの言葉にはっとして顔を上げるアキオ。
チャゲ「いちばん信頼していた人に理解してもらえないこと、背を向けられてしまうこと・・・」
- フラッシュバック -
○28 20年前の神奈川西京病院・ER手術室
医師「左肺と脾臓断裂、腎臓も潰れてる・・・しかし、これだけ失血してよく死ななかったな。MAP追加で2単位用意」
手術台に仰向けに寝かされ挿管されているのは・・・チャゲ。薄く目が開き、かすかに頭を動かす。
オペ看「先生!」
医師「意識戻ったぞ!」
慌ただしく動く医師たち。
チャゲ声を上げようとするが、挿管されていて声が出せない。
オペ看「何か言おうとしているみたい・・・」
何かを強く訴えかけるようなチャゲの瞳アップで・・・
scene 27-28:END
○29元町・ル・シュマン
チャゲ「しかし、この話に闇金業者が絡んでくるのが腑に落ちないな・・・」
M姐「アキオはその借金って知ってたの?」
首を横に振るアキオ。
アキオ「いや、突然黒服の男に連帯保証人だからって借用書見せられて・・・」
カーナシ「なんだよそれ!それじゃホントにサキちゃんが借りたのかどうか分からねえじゃん」
チャゲ「いずれにしても彼女を探し出せばはっきりするか・・・東京港北病院だっけ」
アキオ「はい」
M姐、チャゲ見てうなずき、携帯電話を取り出してダイヤルする。
チャゲ「ちょうどその病院に仲間の看護師がいる」
カーナシ「キャスリンか!」
アキオ「外人ですか?」
カーナシ「うんにゃ、山田キャスリン花子。帰国子女なんでキャスリンって名前なんだわ。なんでもアメリカではなんとかナースだったらしい」
M姐「ナースプラクティショナーだよ。・・・あ、キャスリン?」
○30東京港北病院・会議室
演壇に立つ白衣のキャスリン。数十名の看護師を前に研修を行った直後の様子。
キャスリン「メグミ!久しぶりじゃない。大丈夫、いま研修終わったとこだから・・・え?病院から抜け出した子?」
○31元町・ル・シュマン
M姐が電話でキャスリンに説明している。
○32東京港北病院・会議室
キャスリン「がん病棟は担当じゃないけど、その子のことなら報告会に話が上がってたなぁ。確か双子の子だよね?なんか訳ありで、他の面会者と会わないようにしてたらしいけど・・・」
○33元町・ル・シュマン
M姐「分かったありがとうキャスリン」
アキオ「サキに双子の姉妹・・・?」
カーナシ「知らないのか?」
うなずくアキオ。携帯電話を取り出し、サキに電話する。
自動音声で「・・・お掛けになった電話番号は現在・・・」
アキオの携帯を覗き込むカーナシ。待ちうけ画像にサキの写真。
カーナシ、アキオの携帯手に取って。
アキオ「あっ・・・」
カーナシ「おお、結構カワイイ子じゃん。ほら」
カーナシ、M姐とチャゲに見せる。
M姐「ホントだ」
チャゲ、その写真見て固まる。
カーナシ「どうした?チャゲ?」
チャゲ「・・・会った事あるかも」
チャゲとマスター以外の全員「!」
scene 29-33:END
○34-1 元町・ル・シュマン
カーナシ「会ったことあるかもぉ!?」
チャゲ「ああ、人違いでなければな」
アキオ「その人に会わせて・・・ください」
チャゲ、アキオの目を見て・・・
そこへ、ガチャリと入り口のドアが開く音。
黒スーツ男「オハよー!みなさん」
マスター「まだ準備中だよ」
黒スーツ男、マスター無視して店に入ってくる。
黒スーツ男「裏にカッコいいウンコ色のドカがあったんで~と思ったら、いたねぇ!アキオ青年クン!」
アキオ「・・・」
黒スーツ男「ささっと店出て話そうか?ああん?」
黒スーツ男、慣れ慣れしくアキオの肩に触れ、立ち上がらせようとする。
チャゲ「ちょと待った」
チャゲの手から、ビヨーン!とマジックハンドが伸びて、黒スーツ男の鼻をつまんだ。
黒スーツ男「てめ!なにしやが・・・ほげほがほげ・・・」
チャゲ「どーも取り立てが時代遅れすぎないか?よっぽど悪質なのかそれとも、オツムが足りないのか」
やっと鼻フックを払いのけた、黒スーツの男。
黒スーツ男「ざけんなぁぁぁ!」
チャゲめがけて蹴り入れようとするが、スッとチャゲの電動車椅子が下がって蹴りをよけた。
シャキーン!と日本刀を抜いたような金属音と共に、チャゲの電動車椅子からチタン製の杖が飛び出し、チャゲが左手に杖の柄を持った手をそのまま返して、バランスを崩した黒スーツ男の尻を、杖の先で「ちょこん」と突いた。
どーん!と黒スーツ男は肩から床に倒れ込む。
黒スーツ男、肩を押さえて顔を上げた先に、凄みのあるカーナシの顔・股間・顔のショット。
黒スーツ男「で、デカイ・・・(負けた)」
カーナシ「店ん中で暴れるのはイケてないゼオ。落ち着いて話さんかい!」
カーナシ、黒スーツ男を立たせ、M姐が持ってきた椅子に、黒スーツ男がドサリと座り込む。
カーナシ「何がデカイって?」と、M姐に。
M姐「コ・コ・ロだろ?(ニヤリ)」
アキオ「・・・」
- 時間経過 -
テーブルの上に借用書のコピー。
金参百萬圓のローマ数字。
カーナシの声。
カーナシ「病院でサインしたぁ!?」
M姐「アキオのサインに間違いないんだこれ?」
うなずくアキオ。
黒スーツ男「でしょ?ですから先ほどからご説明させていただいているように・・・」
チャゲのマジックハンドが、黒スーツ男の顔の先まで延びる。
チャゲ「ふーむ・・・まったく」
何かを悟っている風なチャゲ。
そこへまた、ル・シュマンのドアが開く音が・・・
清楚な感じの女性が一人店に入ってくる。
アキオ「!」
思わず立ち上がる。
カーナシ、口をポカンと開けて女性を見つめる。
アキオ「サ、サキ・・・?」
scene 34:つづく
○34-2 元町・ル・シュマン
店に入ってきた女性・ユキ。
サキと双子のようによく似ている。
黒スーツの男の前へ進み出ると、肩に掛けたバッグから取り出したのは、借用書の原本。
それをビリビリと二つに破った!
ユキ「サキの姉・・・ユキです。金融業者の人にここだと聞いて来ました。先ほど、お金は全額返金してこの借用書をもらってきました。もうお引き取りください」
黒スーツの男、ユキに救われた思いで立ち上がる。
黒スーツの男「ったく」
ホッとしたのを隠すようにふてくされた態度でそそくさとドアに向かう。ドアを開けて振り向き・・・
黒スーツの男「お前ら覚えてろよ!」
M姐「べぇー!」
ユキ「あなたが、アキオさんですね・・・」
アキオうなずき、
アキオ「サキは・・・サキは今どこなんです?」
ユキ「妹がご迷惑を掛けてしまったことはお詫びします。ですが・・・もう妹のことは忘れてください」
アキオ「!?」
カーナシ「そうだよな・・・」
急に冷めた感じで、カウンターに座りタバコに火を付けるカーナシ。
カーナシ「借金のことがカタ付いたんだし、もういいだろ?」
M姐「カーナシ、あんた!(何を・・・)」
アキオ「・・・」
チャゲ「ユキさん・・・だっけ?」
ユキ「チャゲさん・・・こんなところでまたお会いするなんて・・・みなさんにも、妹のことでご迷惑をお掛けしました」
チャゲ「よかったら話をしてくれないかな」
ユキ「お話するようなことは何も・・・失礼します」
背を向けて帰りかけるユキ。
チャゲ「見て見ぬふりをしていた・・・それ、妹さんのことだったんでしょ」
ユキの足が止まる。
- フラッシュバック -
○35東京港北病院・病室
病室のドアが開き、ベッドで寝ていた、やつれ顔のサキがふとベッドから顔を上げる。
サキ「・・・お姉ちゃん!」
ユキ「サキ!」
思わず駆け寄りサキを抱きしめる、ユキ。
サキ「お姉ちゃんごめんね・・・」
二人、号泣。
scene 34-35:END
※このシナリオはフィクションであり、実在の人物、団体などとは一切関係ありません。
