2008-05-24 (土)

夕闇が街を包み込んでゆく。
霧雨は二人の身体を包み込む。

海沿いの公園のフェンスに寄りかかる。
時折波の音が聞こえる。
名前を口にし、背の低い彼女を抱き寄せる。
長身の身体を傾げ、彼女の唇にキスをする。
傾いた傘が二人を隠す。

    どこかへ行こう。

高速バスが走る。明るさを押さえた車内。
少し開いたカーテンから見える窓に水滴が流れてゆく。
窓ガラスには二人の顔が浮かび上がる。
窓の外はバスを追い越してゆく車のテールランプが赤く滲む。
続くハイウェイライト。

会社が終わり二人は駅のホームで待ち合わせる。
階段を上ると柱を背にして待つ彼女の姿。
目が合い笑顔が広がる。

ボックスシートの脇に立つ。
彼女に腕を回し身体を引き寄せる。
混んだ車内で二人は密着する。
降りる駅が近づく。

    このまま遠くへ行こう

終点のホームに降りる。
ホームの向こうには雨に濡れる街のネオンが広がる。
ホームから人が減ってゆく。
雨に濡れないように彼女の身体を引き寄せる。
もっと先へ行く電車を待つ。
今日、この時間以降、一番遠くまで行く電車。

地方都市へと向かう電車がホームに滑り込む。
電車は雨の暗闇へと走り出す。

    今日、一番の遠く。

小さなホテルで温かいシャワーを浴びる。
濡れた素肌を指が這う。それを唇が追いかける。

    もっと遠くへ行こう。

海に低い雲が垂れ込める。海の匂いを雨の匂いが消し去る。
身体を包み込むのは雨の匂い。そして彼女の匂い。
船室からデッキに出る。船のデッキが濡れている。
船の航跡はすぐに雨の中に見えなくなる。

小さな漁港のある、小さな町。
寂れたコーヒーショップで雨音を背にして飲む温もり。
見つめ合い目を細める笑顔。

たまの晴れた日は日溜まりにたまる猫のよう。
窓際のベッドに寝ころび身体を寄せ合う。

    今日は部屋にいようか…。

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