乗船者数270名。生存者5名。

乗船者数270名。生存者5名。

2007-12-09 (日)

今から二十数年前のこと。高校の修学旅行が四国だった。生徒にアンケートを採り一番多かったのが四国。なんで四国だよという気もしないでもないけど四国。四国に何があるんだよと言っても四国に決まり。

12クラスで540人くらいの生徒数で半分が広島から松山に入り淡路島に抜けるコース。もう半分が逆の淡路島から松山広島というコース。僕は前者の広島から松山行きのコース。

広島でお決まりの原爆ドームや資料館見学して、それから港へ。広島港だったか、広島から少し離れた港からだったか忘れたけど、どっかの港から多分数千トンくらいの船に乗り松山へ。
港を出てすぐに波が高くなる。天候は雨が降ったり曇ったり、雲の間から日が差したりという荒らしの時独特の天気。
出航してまもなく高い波に船酔いし気持ち悪くなるヤツが出てくる。一人、また一人とトイレに向かって彷徨いはじめる。しかしそれはこれから始まる悪魔の時間の序章でしかなかった。
沖に出るに従って波は高くなり、トイレ前に行列…しゃがみ込む集団ができる。トイレに間に合わずにその辺でゲロを吐くヤツが現れる。ゲロの臭いにつられてもらいゲロするヤツが続出する。船室に横たわる肉塊。次々と船室に積み上がる肉塊。教師までもが次々船室に肉塊として横たわる。
横たわる肉塊、積み上がる肉塊、肉塊、肉塊。船内は凄まじい悪臭と積み上がる肉塊。

いつの間にか元気な者が集まり出す。その数5名。普段は顔も知らないヤツや、仲の悪いヤツも関係なしに一緒に連んで船内見学をする。
船室から出て船の舳先に近い方へ向かう。風に海水が巻き上げられて身体中に当たる。呼吸とともに口に海水が入り込む。普段呼吸する数倍の勢いで空気が押し込まれ、同時に雨と海水が口に流れ込む。
大きな波に船が乗り、船は大きく揺れ舳先が海面に打ち付ける。打ち付けられた海水は5名を容赦なく水浸しにする。パンツの中まで海水で水浸しになる。

船員が「君たちは元気だなぁ」と寄ってきて操舵室に案内してくれる。今考えると大時化に船外にいられたんじゃ危なくてしょーがねーからさりげなく船内に入れたのかもしれんが。
操舵室では「瀬戸内海がこんなに荒れるのは珍しいんだよ」とわりかし暢気な船長が舵を取る。「こんなに荒れてると着岸できない」と言う旨のことを言う。おれらは別に構わないけど、船室で肉塊となって積み上がってる連中は困るわな。

と、昨夏にmixiの自分のところに書いた文章を引っ張り出して、ちょっと手を入れてここにも載せてみた。夏にそんなことを思い出したのは、ディナーに誘われてロイヤルウイングに乗るから。ロイヤルウイングって確か横浜でレストラン船として就航する前は、松山とかそっち方面の航路の船だったんだよなぁという記憶があったことから。
船の大きさ的にも同じくらいだし、そのときの船が、今は余生を横浜港で過ごしているんだったらおもしろいなぁと思ったのだ。

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乗船者数270名。生存者5名。 への2件のフィードバック

  1. lunar のコメント:

    お若い頃からえら呼吸だったのですね。

  2. shige のコメント:

    最近、えら呼吸だ、河童だと言ってますが、
    本当は「たこ」なんですけどね。(マジ)
    なので、船を海に引き込む側なの。

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