黒猫にゃー。の冒険 -4 急いで絵を運ぶにゃ

2008-05-25 (日)

配送に使われている小さなトラックの助手席に、黒いにゃー。がいます。
黒いにゃー。は大人しくシートにちょこんと座っています。
どうやら、営業所から荷物を届ける配送トラックに、一緒に乗り込んだようです。

「あと何件配送するにゃ?」

  「うーん、あと10箇所くらい荷物を届けたら終了だよ」

「もう飽きたにゃ」

  「もうちょっとだから大人しくしていてね」

小高い丘の道を走っていると、急に目の前が開けました。

「!」

「海だにゃ!」

「にゃー!にゃー!」

ドライバーが次の配送先にトラックを停めると、黒いにゃー。はトラックから飛び降りました。

「海はいいにゃ」
「海の向こうには何があるのかにゃ」

黒いにゃー。は海へ向かって坂道を歩き出しました。

**

「にゃ?」

坂道を歩いていると何かに気が付いたようです。
坂道の途中のアトリエには女の人が絵筆を持って大慌てをしていました。
アトリエの表札には「画家 キキ」と書かれています。

黒いにゃー。はしばらく眺めていました。

画家のキキさんは黒いにゃー。に気付くと、黒いにゃー。を抱き上げて話しかけました。

  「どうしよう…」

「にゃー、にゃ?」

  「明日までに展覧会の会場に絵を持っていかないとならないの」
   「でも…、業者の手違いで明日までに持っていけなくなっちゃったの」

「にゃー!」
「にゃー!にゃー!」

  「こんなことネコちゃんに言っても仕方がないわね…」
   「ネコちゃん、ごめんね」

「にゃー!にゃー!」

黒いにゃー。は画家のキキさんの腕の中から離れると走り出しました。

「にゃー。が届けるにゃ」
「探すにゃ」

黒いにゃー。は、さっきまで乗っていた、配送用のトラックを探しに走ります。
坂道を降りきる手前でやっと配送中のトラックを見つけました。

「いたにゃ!」
「乗り込むにゃ!」

  「どこへ行ってたんだい?」
   「もう全部配送終わったところだから営業所に戻るぞ」

「運ぶにゃ」

  「ん?もう全部配送し終わったんだぞ」

「まだあるにゃ」
「あっちに行くにゃ」
「こっちにゃ」

ドライバーは黒いにゃー。の言う通りにトラックを走らせます。

「ここにゃ」
「ここに行くにゃ」

  「ここがどうしたんだい?」

「キキさんが困ってるにゃ」
「キキさんの荷物を運ぶにゃ」
「キキさんのところに行くにゃ」

ドライバーはわけもわからぬまま、アトリエのインターホンを鳴らします。
アトリエの中からは画家のキキさんが焦り疲れた顔をして出てきました。

     「あら…、さっきのネコちゃん」

  「このネコが、ここに来る仕草をしたものですから、ちょっと来てみたのです」

ドライバーは弱った顔をして

  「何か荷物はございますか?」

と聞きました。

     「実は…。この絵を展覧会の会場まで運ばなくてはならなくて…」

  「絵ですか…。うーん、まいったな」

     「やっぱり運べませんよね」

「にゃー!!」

  「そうだ。美術品を運ぶ専任スタッフが今、どこにいるか聞いてみますね」

  「もしもし…」

ドライバーは電話をかけ終わると笑顔で

  「大丈夫」
   「近くに美術品を運ぶ専任スタッフがいるので、今からこっちに向かってもらいます」
   「安心して下さい。明日に届けられますから」

画家のキキさんの顔がみるみる明るくなって、黒いにゃー。を抱き上げました。

     「ネコちゃんが連れてきてくれたのね。ありがとうね」

**

翌日。約束通り、展覧会の会場にキキさんの絵が届けられました。

展覧会の会場では、キキさんの絵の下に黒いにゃー。がちょこんと座り、誇らしそうな顔をしていました。

???
画家 キキさん(伊藤久美子さん)のサイトはこちら。

http://kiki.kumiko-ito.com/?eid=875127
キキさんの大好きな場所が七里ヶ浜なので、七里ヶ浜から上った先辺りをイメージ。

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