2008-12-25 (木)
仲の良いバイク仲間と初詣の行き先を考える。「伊勢神宮にしよう」
そんな友人の言葉に僕は肯く。
12月30日夜
藤沢鵠沼から、茅ヶ崎松が丘を抜け、茅ヶ崎駅を超えたあたりでルート1に入る。
冷たい空気の中、DT200Rを走らせる。前に後ろにとめまぐるしく位置を変え、友人のRZ250Rのクロスチャンバーの音が鳴り響く。
平塚で深夜営業のラーメンショップに入り暖をとる。
「よし行くか」
「一気に箱根越えちゃいたいな」
「一気に行っちゃいましょう」
エンジンをかけDT200Rをスタートさせる。
ルート1を走らせる。エンジンがくすぶり気味。
走っているうちに良くなるか。上まで大きくエンジを回してみたりと様子を見つつ走る。いまいち調子が良くならないまま大磯、二宮、小田原へと走らせる。
山崎から箱根新道へと入る。
非力なエンジンで一気に上ってしまいたいところだけどエンジンはさらに不調に。
すぐに失火する。上り坂ですぐに速度が落ちてしまうその瞬間で再始動を試みるが再始動してくれない。
クラッチをつないで一瞬かかり始める気配はあるものの、結局かからず。
路肩に寄せキック、キック、キック、キック。
何度もキックを繰り返し、何かのきっかけでエンジンがかかる。
そこから走り出すとまた長くて1キロほど。短いと100mほども走らないうちに止まってしまう。
路肩に寄せキック、キック、キック、キック。
何度もキックを繰り返し、何かのきっかけでエンジンがかかる。
走り出すとまたすぐに止まる。
路肩に寄せキック、キック、キック、キック。
何度もキックを繰り返し、何かのきっかけでエンジンがかかる。
「さあ、どうする。」
「戻るか…」
「進むか…」
なんだかんだで畑宿あたりの旧道と絡み合うところより高いところまで来ている。
「どうするか」
心が葛藤を起こす。繰り返すキックで身体は熱い。しかし氷点下になる冷気に指先の感覚はなくなっている。
「行きましょう」
「上りきったらニュートラで下れますから」
「三島まで降りたらどこか風の当たらないところで原因究明します」
そう決めてキックする。キック、キック、キック。
またもエンジンがかかってはちょっと走って止まっての繰り返しをする。
あまりにかからないときは押す。ひたすら押す。DT200Rとはいえ箱根を押すのはしんどい。チャリで箱根の旧道をアップヒルしている方がずいぶんと楽に思うほど。
そんな繰り返しで箱根峠を越える。
ニュートラルにしRZ250Rのヘッドライトとテールランプを頼りに三島へと下る。
後ろから車が見えると減速し、左に寄せ抜いてもらう。
三島だったか沼津だったか、営業時間外のガソリンスタンドの敷地に止め、RZのヘッドライトを当ててもらう。ガソリンのルートの確認。プラグのチェック。そうした基本的なところをチェックする。しかし問題は見あたらない。
さあ、どうする。
行くしかない。まだ時間は深夜。3時台とかそのくらいの時間。
引き返すなんてできやしない。もう箱根なんて上れっこないのだ。
引き返すこと。それは負けを認める事。所詮、十代のガキの考える事。
テンションが上がりきっている十代には引き返すことなんてあり得ないのだ。
キック、キック、キック。エンジンの些細な息づかいにアクセルを軽くあわす。
よっしゃ。スタート。
田子の浦の手前まではルート1の一本海側を走る。
田子の浦からはルート1をひたすら走る。途中何度も、何度もキック、キック、キック。
きっと1キロ走ったらキック50回はしている。
しかし、段々わかってきた。
アクセルを開けちゃいけないのだ。アクセルをなるべく開けないようにし、1/32開度、1/16開度とほんの少しだけ開いてゆっくり速度を載せていく。
減速させると再加速させるのに時間がかかるからなるべく減速させたくない。
由比、清水、静岡…。よしいい感じだ。
調子が良いと5キロ以上エンジン止まらずに走れる。これまでに比べたら格段に楽。
体力だけは無駄に持っている。5分に一度止まってキック50回や100回くらいなんてことはないぜ。それもDT200Rのキックなんて屁でもないぜ。
大井川を越えて金谷だったかそこらの急坂でエンジンが止まる。アクセルを開けた途端にエンジンは止まる。
こんな坂、ずっと続く訳じゃないのだから押せばいい。押す、押す。ひたすら押す。
よし下り。ゴー。
袋井。磐田…。空が明るくなってくる。
浜松。朝がやってくる。
「休みましょう」
「バイクショップもどこかあるかもしれないし」
「10時頃までサウナで休憩しましょう」
熱い湯で身体を温め、1時間ほど仮眠をする。
眠気とともにここでリタイヤしたい気持ちが襲う。
高すぎたテンションは態を潜め、不安に襲われる。
ここから伊勢神宮までまだかなりある。
正直、ここでリタイヤしたい…。
そんな気持ちを振り去るように起きて公衆電話に向かう。電話帳から次々バイクショップに電話をかける。時間は11時近く。年末の休暇に入ってなければもうやっているはず。
次々に電話をかけるが年末年始休暇の音声が流れるところばかり。
そんな中電話に出てくれたバイクショップがあった。
バイクマンK
「助かった…」
そんな気持ちとともに、道順を聞きメモをとる。ここから北上し、東名を越えて…。
(続く)