力
2008-02-15 (金)
ある仲の良い友人のこと。
彼とはじめて出会ったときは少し暗めのヤツだった。
朝、高校へ来ると帰りまで席を立たないようなヤツ。
「バイクなんて興味ないよ」
そんなことを言う彼を無理矢理に原付バイクに跨らせる。
「これがアクセル」「これがクラッチ」「これがブレーキ」……
「アクセルを開けながらクラッチを徐々につないで…」
何度かのエンストのあと、それまでより大きくアクセルを開けた原付バイクは
勢いよく飛び出した。
そのときの彼の顔は覚えていないが、きっと慌てた顔をして必死に原付バイクに
しがみつこうとしたんだと思う。
それから直に「バイクなんて興味ないよ」と言い続けていたのが
急に免許を取得する勉強をはじめた。
早々に原付免許を取って、はじめて乗った原付バイクと同じ
「RG50ガンマ」を購入した。
きっと彼の中で何かが変わったんだろう、
まるで人間が変わったように明るくなった。
たった50ccのエンジンに何を感じたんだろう。
たった7.2psの力に何を感じたのだろう。
小さなエンジンが唸り、その小さなエンジンは彼を未知の世界に連れ出した。
生身の身体では出せない「力」とともに。
そして段々と大きなエンジンになり、大きな力となっていった。
彼にとってはエンジンの力は生きる力であったに違いない。
そんな彼の心のエンジンが壊れて久しい。
コンロッドが折れてしまったかのように心が折れてしまった。
オートバイだったらヤツ自身がエンジンをおろし、修理してしまうだろう。
だけど自分の心を修理するのは難しいんだよね。
何とかもう一度、力を取り戻させてやりたい…。