2008-03-21 (金)
ドーナツショップのインテリアとして置かれているメリーゴーランドが回る。
テーブルの上にはオールドファッションと薄いコーヒー。
オールドファッションをかじっては食感を楽しみコーヒーを口に含む。
天井に埋め込まれたスピーカーからはオールディーズの曲が流れてくる。
心地よい気持ちでオールディーズの曲を聴く。
突然に低い位置の別のスピーカーから音が鳴り出す。
店内の片隅に置かれたジュークボックスからの音。
とてもとても小さい音で始まる曲。
If I should stay
「あっ」
I would only be in your way
心臓の鼓動が早くなる。
So I’ll go but I know
夏美…
I’ll think of you every step of the way
ドリーパートンの優しく甘い震えた声が響いてくる。
**
卒業式が終わったあと、正門の前で待っていた夏美。
「これ」
と言って渡されたカセットテープ。
「さようなら」
と一言短い言葉を発して夏美は駆けていってしまった。
**
夏美がくれたカセットに入っていたドリーパートンのこの曲を何度も聴いた。
繰り返し繰り返し。何度も何度も。
私はいつも愛してます。
これからもずっとずっと…。
I will always love you
あれから半年か…。
ふと視線を上げてジュークボックスの方を見る。
「あっ」
ジュークボックスの前でこっちを見て微笑んでいたのは夏美だった。
「先輩、久しぶりですね」
「もう、引きずったりしてませんから」
「彼氏だっているんですから」
そう言うと、顔を寄せて頬にキスをしてきた。
「でも、今でも好きです」
「これからもずっと」
一瞬さみしそうな顔をしてすぐに笑顔になり、手を振った。
「行きますね」
僕も笑顔で手を振った。
And I,I will always love you