2008-05-10 (土)
夜明けまであと1時間ほどという時間に目を覚ます。
…ん?
道路を走り往く車のタイヤの音に雨を感じる。
…雨か?
ベッドに横になったまま手を伸ばし窓を開く。
冷たい空気が部屋の中に流れ込む。
…ん?霧か?
…珍しいな。
上半身を起こし外を眺める。
外の街並みは白い霧に覆われている。
霧の中を走るのが好きだ。
極々細かい霧の粒子が身体にまとわりつき、あっという間に濡らしてゆく。
ジェットヘルで走ると咽せるような…うまく呼吸も出来ないような冷たい空気が鼻や口に流れ込んでくる。
そんな中を走るのが好きだ。
…走るか…。
…よし。走ろう。
僕はベッドから起き上がると、ライディングウェアに着替え、その上からレインウェアを着込む。
エンジンをかけると早々ににギヤを入れ、ゆっくりとクラッチをつなぐ。
ゆっくりと…ゆっくりと加速させエンジンを暖めていく。
エンジンが暖まっていくのとともに僕もゆっくりと覚醒していく。
大船駅の観音口側を抜け徐々にペースアップする。
左足、右足と片足ずつステップから足裏を離し、軽く蹴るように脚を投げ出してはジーンズとレインウェアの張りを取りステップに戻す。
…ふぅ。
短く息を吐き気を入れ直す。
…よし。
藤沢へと向け製薬会社の工場前の直線を大きくアクセルを開ける。
タコメーターの針は右へと大きく踊る。
エンジンが高い咆哮を奏でる。
リヤタイヤがアスファルトを捉えきれないまま加速していく。
リヤタイヤがアスファルトを捉えるとフロントを浮かして加速していく。
スピードメーターの針も大きく右へ振れる。
黄色く点滅する信号をパスし、前走車の赤いテールランプを右から一気にパスする。
浜須賀から海岸沿いに出る頃には周囲は徐々に明るくなり、黒い闇は態を潜め、白い世界の中からはより先の輪郭が現れてくる。もうじき霧も晴れるだろう。霧の先へと…。
霧の先にある貴女の心までオートバイを加速させよう。